東京の坂道を歩く 皆川智彦「東京坂道百景」手漉き和紙で見る44景

東京を歩いていると、ふと現れる坂道。

駅から目的地へ向かう途中に何気なく通り過ぎていた坂が、実は長い時間をかけてつくられた地形の一部だった。そんなことに気づくと、いつもの街の風景が少し違って見えてきます。

2026年8月19日(水)から8月25日(火)まで、新宿 北村写真機店 B1F ベースメントギャラリーで、坂道写真家・皆川智彦氏による写真展「東京坂道百景/手漉き和紙による四十四景」が開催されます。

写真集『東京坂道100景』の発売を記念した今回の展示では、収録作品を中心に44点を展示。すべての作品が手漉き和紙にプリントされ、写真でありながら、どこか浮世絵を思わせる独特の質感を楽しめます。

東京には約900もの坂道がある

東京は、平坦な街というイメージがあるかもしれませんが、実際に歩いてみると坂道が多いことに気づきます。

その理由のひとつが、武蔵野台地と低地の境界に生まれた起伏です。さらに台地にはスリバチ状の谷地形や湧水があり、川が谷を刻むことで、その周辺にも数多くの坂道が生まれました。名前が付いている坂だけでも、東京には約900あるといわれています。

つまり、私たちが「ただの坂」と思っている場所にも、地形によって生まれた理由があり、そこには街の歴史が積み重なっているのです。

坂道を撮るということ

皆川智彦氏が本格的に写真活動を再開し、坂道の撮影に取り組むきっかけとなったのは、六本木交差点近くで古い階段を目にしたことだったといいます。皆川氏は東京の坂道を「都市の記憶と未来が交差する異界」と捉え、撮影を続けています。

坂道は、単なる道路の傾斜ではありません。上から見れば街を見渡す場所になり、下から見れば、その先に何があるのかを想像させる。昼と夜でも印象が変わり、晴天と雨でも表情が変わる。

そして、人が歩けば生活の風景になり、誰もいなければ、どこか現実から切り離されたような風景にもなる。皆川氏が写し取るのは、そうした「坂道そのもの」だけではなく、坂道を取り巻く東京の時間なのかもしれません。

坂道が「異界への入口」に見えるとき

2025年9月に開催された写真展「都市に潜む異形の道/東京坂道三十六景」では、日本坂道学会副会長のタモリ氏も皆川氏の作品にコメントを寄せています。タモリ氏が印象的だと語ったのは、夜や悪天候、そして人や車が存在する坂道の風景です。

一般的に美しい風景写真と聞くと、晴れた日や誰もいない静かな場所を想像するかもしれません。しかし、皆川氏の写真はその逆にあります。人がいて、車がいて、天気も悪い。そんな日常の風景が、写真になることで「異界への入口」のように見えてくる。

そこが、この作品の面白さです。

手漉き和紙だからこそ生まれる東京の表情

今回の展示でもうひとつ注目したいのが、作品をプリントする素材です。44点の作品はすべて手漉き和紙にプリントされます。写真というと、レンズが捉えた瞬間を高精細に再現するものというイメージがあります。

ですが、和紙という日本の伝統的な素材に写真を重ねることで、風景に別の時間が加わります。東京という近代都市を写した写真と、古くから日本で使われてきた和紙=新しいものと古いもの。その組み合わせそのものが、東京という街の性格にも重なって見えます。

いつもの道が少し違って見えてくる

写真展を見たあと、東京の街を歩くときには、いつもより坂道が気になってしまうかもしれません。

あの坂には名前があるのだろうか?

なぜここだけ坂になっているんだろう?

この先には何があるんだろう?

そんな小さな疑問が、街を歩く楽しさにつながります。観光地でもランドマークでもない、毎日の生活のなかにある、ごく普通の坂道。そこに地形があり、歴史があり、人の暮らしがある。そんな東京の見過ごしてしまいそうな風景に、もう一度目を向けさせてくれる写真展です。



展示概要

皆川智彦 写真展「東京坂道百景/手漉き和紙による四十四景」

開催期間:2026年8月19日(水)~8月25日(火)
開催時間:10:00~21:00
会場:新宿 北村写真機店 B1F ベースメントギャラリー

皆川智彦氏の在廊予定

会期中は、皆川智彦氏の在廊も予定されています。日時は変更になる可能性があるため、来場前に最新情報をご確認ください。

  • 8月19日(水)10:30~13:30、14:30~20:30
  • 8月20日(木)10:30~18:30
  • 8月21日(金)10:30~13:30、14:30~20:30
  • 8月22日(土)~8月25日(火)10:30~18:30

在廊日時の変更や最新情報は、皆川智彦氏のFacebookで告知されます。ご来場の際は、事前にご確認ください。

ハラカズコ

メディアライター

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