音楽に「国境」はあるのだろうか。
ジャンル、世代、国籍、時代、そして人と人との間にあるさまざまな境界を軽やかに越えてきた東京スカパラダイスオーケストラ。
デビューから37年を迎えた2026年、その歩みを「平和への実践」として捉え直す展覧会「TOKYO SKA HAS NO BORDER」が、東京・西麻布のWALL_alternativeで開幕しました。
代表曲「Paradise Has No Border」に込められた思想を起点に、3組のアーティストによる新作、メンバーへのインタビュー、貴重な一次資料やアーカイブなどを通して、“東京スカ”という唯一無二の共同体を読み解く本展。
音楽を「聴く」だけではなく、アートとして「見る」、記憶として「たどる」。
37年間の時間そのものを、五感で感じられるような展覧会です。
37年間の「東京スカ」をアートとリサーチで可視化

本展の大きな特徴は、東京スカパラダイスオーケストラの37年間を、単なる年表として振り返るのではなく、「生命体」として捉えていること。
本展のキュレーション/リサーチを担当した島影圭佑氏は、リサーチを進めるなかで、東京スカパラダイスオーケストラが「東京スカ」という独自のサウンドを通じて平和のあり方を生み出してきた存在だと捉えました。

その考えを象徴するのが、GAMOと谷中敦へのインタビューから導き出された「生命体としての東京スカパラダイスオーケストラ」という視点です。

GAMOが語った「動的平衡」や生命体の代謝をヒントに、人や音楽との出会いによって一度壊れ、再び合成されながら、新しい姿へと変化していくバンドの姿を、細胞分裂や循環を思わせるダイアグラムとして表現。
さらに、メンバーそれぞれが「Paradise Has No Border」を感じた瞬間を聞いたインタビューをもとに、37年間の出来事を年輪のような同心円上にマッピングしています。
「時代」「逆境」「世代」「国境」など、さまざまなボーダーを越えてきた出来事を星として配置し、それらをつなぐことで、メンバーそれぞれの「NO BORDER」の軌跡を星座のように描き出しました。
言葉だけでは伝えきれない、バンドのエネルギーや人とのつながりを、目で見える形へ。
そこには、長く続くバンドだからこそ生まれる「変わり続けること」の強さが表れています。
3組のアーティストが表現するそれぞれの「NO BORDER」

会場では、大野修、vug、小林健太の3組のアーティストが、それぞれ異なるアプローチで東京スカパラダイスオーケストラの「NO BORDER」を表現しています。
大野修は、プラスチックや役目を終えた楽器などを組み合わせる「ブリコラージュ」の手法を用いて作品を制作。
スカパラを想起させるスーツや管楽器、パーカッションのパーツを取り入れた《Chunk》シリーズの新作に加え、メンバーが実際に使用していたスティックやスネアのヘッドを使った《Synthesizer #2601》も展示されています。
約20個の振動センサーとオシロスコープを搭載した《Synthesizer #2601》は、会場の音や振動に反応するインスタレーション。
「音楽を聴く」という行為を、振動として目に見えるものへ変えていきます。
一方、vugは「LOVE」と「平和」をテーマに、複数の人物が集まり、対話する姿を描きました。

東京スカパラダイスオーケストラが何かを決める際に「みんなで話し合って決める」というエピソードから着想を得た作品には、共同体としてのスカパラの姿が投影されています。

そして小林健太は、デジタル写真の色情報を引き伸ばす「スマッジ」という技法を用いて、2023年のニューヨーク公演のライブ写真を新たな作品へ。
静止した写真の中に、ライブの動きや身体性、そしてスカパラの「グルーヴ」を立ち上げています。
3組に共通するのは、音楽をそのまま再現するのではなく、それぞれの表現へと“翻訳”していること。
スカという音楽を、彫刻、絵画、デジタル写真へ。
ジャンルを越えることで、「NO BORDER」という言葉が、より立体的に浮かび上がってきます。
会場奥には、メンバーへのインタビュー映像とともに、書籍や雑誌、一次資料などを展示する「リサーチエリア」も設置。

1998年から2003年まで東京スカパラダイスオーケストラが主宰・企画した『JUSTA MAGAZINE』や、海外公演のセットリストなど、37年の活動をたどる貴重な資料を見ることができます。
さらに会場では、本展限定のフード&ドリンクを提供。
大森はじめ、谷中敦、川上つよしがそれぞれセレクトした「NO BORDER」プレイリストもBGMとして流れます。
見る、聴く、読む、味わう。
作品だけではなく、空間そのものを通して「Paradise Has No Border」を体験できる構成です。
そして、会場となるWALL_alternativeもまた、本展のテーマを象徴する場所。
建築家ナイジェル・コーツが手がけた築37年の建築を活用したアートスペースで、東京スカパラダイスオーケストラと同じ「37年」という時間を刻んできました。
37年のバンドと、37年の建築。
偶然とは思えない時間の重なりも、本展をより印象的なものにしています。
開催概要
「TOKYO SKA HAS NO BORDER」
会期:2026年8月11日(火)~8月29日(土)
※会期中無休
会場:WALL_alternative
東京都港区西麻布4-2-4 1F
営業時間:
土・日/16:00~24:00
月~金・祝日/18:00~24:00
入場料:無料
※ワンドリンク制
※優先入場時間は事前予約制
主催:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社
企画:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社/島影圭佑